「一日葬」という言葉を、葬儀社のパンフレットや家族との会話で耳にする機会が増えています。
一日葬とは、通夜を行わず告別式と火葬を1日で済ませる葬儀の形式です。参列者の負担を抑えられることから、近年選ぶ家庭が増えています。
とはいえ「通夜をしないと失礼にあたらないか」「お寺との関係は大丈夫か」といった不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、一日葬の流れや費用相場、選ぶときに気をつけたい点を、はじめて検討する方に向けて整理しました。
すでに葬儀の予定が決まっている方は費用相場の章から、まだ形式を迷っている方はメリット・デメリットの章から読んでいただいても構いません。
一日葬とは(一般的な葬儀との違い)
一日葬とは、通夜を省略し、告別式と火葬だけを1日で行う葬儀の形式です。一般的な葬儀(二日葬)は、1日目に通夜、2日目に告別式・火葬という2日間の日程で進みます。
一日葬はこのうち通夜を省き、告別式当日にすべての儀式を終えます。
宗教的な意味合いを持つ通夜という儀式そのものを無くすわけではなく、あくまで日程を1日に凝縮する形式である点が、混同されやすいポイントです。
宗派や地域の慣習によっては、告別式の当日に初七日法要を繰り上げて行う「繰り上げ初七日」を組み合わせるケースも多く見られます。
この場合、火葬・収骨から式場に戻ったあとにそのまま法要まで済ませられるため、後日あらためて親族が集まる手間も省けます。
近年は、近親者のみで行う家族葬をベースに、日程だけを一日葬形式にする組み合わせも増えており、「家族葬×一日葬」という形で案内する葬儀社も見られます。
一般的な葬儀(二日葬)との違い
最も大きな違いは日程と参列者の負担です。
二日葬では、遠方の親族や高齢の参列者が2日連続で会場に足を運ぶ必要があります。
宿泊が必要になったり、仕事を2日休まなければならなかったりと、参列する側の負担も小さくありません。
一日葬なら1日で完結するため、宿泊の手配や仕事の調整がしやすくなります。
また、通夜振る舞い(通夜の後の食事)が不要になる分、料理や返礼品にかかる費用も抑えられます。
喪主側にとっても、2日間にわたって気を張り続ける必要が無くなるという心理的な負担軽減があります。
一日葬が広がっている背景
株式会社鎌倉新書の調査によると、一日葬を選んだ人の割合は2015年の3.9%から2024年には10.2%まで増えています。
約10年で3倍近くに増えており、決して珍しい選択肢ではなくなってきていることが分かります。
高齢化に伴って、参列者・遺族双方の身体的な負担を減らしたいというニーズが背景にあります。
また、近親者のみで見送る家族葬が主流になったことで、通夜と告別式を分ける意味合いが薄れてきたことも一因です。
参列者が少人数であれば、あえて2日間に分ける必要性自体が小さくなるためです。
一日葬のメリット・デメリット

一日葬には利点だけでなく、事前に知っておくべき注意点もあります。
どちらか一方だけを見て決めるのではなく、自分たちの状況に照らして両方を確認しておくことが大切です。
メリット
- 通夜が無い分、遺族・参列者の体力的な負担が軽くなります
- 通夜振る舞いや式場使用料が1日分減り、費用を抑えやすくなります
- 遠方の親族も日帰りで参列しやすく、日程調整の負担が減ります
特に喪主が高齢の場合、2日間にわたる対応は想像以上に体力を消耗します。
一日葬であれば、告別式が終わればその日のうちに一区切りがつくため、心身の負担を最小限にできます。
また、参列者にとっても仕事や介護など日常生活への影響を1日分に抑えられるという利点があります。
共働き世帯や、小さな子どもがいる家庭では、この「休みが1日で済む」という点が参列のハードルを下げてくれます。
知っておきたいデメリット・注意点
- 菩提寺(付き合いのあるお寺)によっては、通夜を省くことに難色を示される場合があります
- 訃報を聞いてすぐに来られない親族にとって、お別れの時間が短く感じられることがあります
- 1日に日程が集中するため、参列できる親族の範囲を事前に伝えておく配慮が必要です
なぜなら、通夜と告別式それぞれに読経を行うのが本来の形という考え方が、今も根強く残っているためです。
特に、日中に仕事がある会社員や、遠方に住む親族にとっては、お別れの機会が実質1回に減ってしまうことが心理的な負担になる場合があります。
こうした注意点は、次の章以降で具体的な対処法とあわせて説明します。
一日葬の流れ【当日のスケジュール】

一日葬の当日は、納棺から告別式、火葬までを1日で行います。
あらかじめ全体の流れを把握しておくと、当日慌てずに過ごせます。
前日までの準備
一日葬では通夜が無いため、前日までにご遺体の安置と納棺を済ませておきます。
菩提寺がある場合は、この段階で日程と読経の依頼について相談しておくと当日がスムーズです。
あわせて、参列を案内する範囲や、香典・供花の受け取り方についても家族内で決めておくと良いでしょう。
当日の流れ
一般的な一日葬の当日は、次のような流れで進みます。
- 午前:受付・開式・読経・弔辞
- 午前〜昼:焼香・告別式終了・出棺
- 昼:火葬・収骨
- 昼〜午後:精進落とし(会食、省略する場合もあります)
式の進行自体は、通夜が無いこと以外は一般的な葬儀とほとんど変わりません。
先述の繰り上げ初七日を行う場合は、精進落としの前後にその法要が加わります。
香典返しは、当日にその場でお渡しする「即日返し」の形を取ることが多く、後日発送する手間を省けるのも一日葬ならではの利点です。
所要時間の目安
告別式そのものは1時間前後で終わることが多く、火葬・収骨を含めても半日程度で一連の流れが完了します。
会食を省略すれば、午前中に開式して昼過ぎには解散できるケースも珍しくありません。
参列者の年齢層が高い場合は、この所要時間の短さが安心材料になることもあります。
一日葬の費用相場

一日葬の費用は、一般葬より抑えられ、家族葬よりやや安くなる傾向があります。
ただし内訳を理解しておかないと、想定外の追加費用に戸惑うことにもなりかねません。
費用の内訳
一日葬の費用には、主に次の項目が含まれます。
- 式場使用料・祭壇・棺などの基本プラン費用
- 火葬料・骨壺などの費用
- 寝台車・霊柩車などの車両費
- 返礼品・会食費(会食を行う場合)
- 寺院へのお布施・お車代
通夜が無い分、通夜振る舞いの飲食費と、通夜・告別式2日分の式場使用料がかからないことが、費用を抑えられる主な理由です。
一方で、参列人数が想定より増えた場合は、返礼品や会食費が追加でかかる点に注意が必要です。
また、菩提寺へのお布施は葬儀形式にかかわらず一定の金額を包むのが通例のため、一日葬にしたからといってお布施が安くなるわけではありません。
見積もりを比較する際は、総額の数字だけでなく、上記の内訳のうちどこまでがプランに含まれているかを確認すると、後からの追加費用を防ぎやすくなります。
特に寝台車の距離加算や、深夜・早朝の搬送費用は見積もりの段階で見落としやすいため、事前に確認しておくと安心です。
一般葬・家族葬との費用比較
株式会社鎌倉新書の「お葬式に関する全国調査」(2024年)によると、葬儀形式別の費用は一般葬161.3万円、家族葬105.7万円、一日葬87.5万円、直葬42.8万円という結果でした。
一日葬は、通夜を省く分だけ家族葬よりも費用を抑えやすく、かつ直葬よりもきちんとした形でお別れができる、中間的な選択肢といえます。
直葬は読経や告別式そのものを行わないケースが多いため、費用は最も安く済みますが、お別れの時間が短くなる点は一日葬以上に大きな違いです。
ただし式場やプラン内容によって金額の幅は大きいため、複数の葬儀社から見積もりを取って比較することをおすすめします。
一日葬を選ぶときに気をつけたいこと
費用や日程の負担が軽い一方で、周囲との関係で事前に確認しておきたい点もあります。
ここを確認せずに進めてしまうと、葬儀後にトラブルへ発展することもあるため、順を追って見ていきます。
菩提寺・お寺との関係
先祖代々のお墓が菩提寺にある場合、通夜を省く一日葬に難色を示されることがあります。
これは、通夜と告別式それぞれに読経を行うのが本来の形という考え方があるためです。
菩提寺との相談が無いまま一日葬で執り行うと、後々お墓への納骨を断られるといった深刻なトラブルに発展した例も報告されています。
トラブルを避けるためにも、一日葬を検討する段階で早めに菩提寺へ相談しておくことが大切です。
菩提寺が遠方にある場合や、そもそも決まった菩提寺が無い場合は、葬儀社が僧侶を手配してくれることもあります。
その場合も、将来的にそのお寺のお墓に納骨する予定があるなら、事前の確認を省略しないようにしましょう。
親族の理解を得る伝え方
一日葬は比較的新しい形式のため、年配の親族には馴染みが薄く、戸惑われることがあります。
「体力的な負担を減らすため」「故人が簡素な形を望んでいたため」など、一日葬を選んだ理由を具体的に伝えると納得を得やすくなります。
訃報の連絡時に、通夜を行わないことと当日の時間割をあわせて伝えておくと、当日の混乱を防げます。
特に、遠方から駆けつける予定だった親族には、直接電話などで早めに伝える配慮があると安心です。
一日葬が向いている人・向いていない人
ここまでの内容を踏まえると、一日葬が向いているかどうかは家族構成や関係者の状況によって変わります。
- 参列者が近親者中心で、遠方からの参列が少ない
- 喪主・遺族の体力的な負担をできるだけ抑えたい
- 菩提寺との相談がすでについている、または菩提寺が特に無い
反対に、地域とのつながりが深く弔問客が多く見込まれる場合や、菩提寺との調整に時間がかかりそうな場合は、通常の二日葬のほうが後々のトラブルを避けやすいこともあります。
どちらか一方に決めきれないときは、葬儀社の担当者に家族構成や地域の慣習を伝えたうえで、率直に相談してみるのも一つの方法です。
よくある質問
- 一日葬と家族葬の違いは何ですか?
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家族葬は近親者のみで行う小規模な葬儀という「参列者の範囲」を表す言葉で、通夜・告別式の2日間で行うのが一般的です。
- 一日葬はお坊さんを呼べますか?
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呼べます。告別式当日に読経していただく形になります。ただし菩提寺によっては一日葬を認めていない場合もあるため、事前の相談が必要です。
- 一日葬にすると香典は減りますか?
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通夜が無い分、通夜での香典を受け取る機会は無くなります。ただし告別式でまとめて受け取る形になるため、総額が大きく変わるわけではありません。
- 一日葬にかかる時間はどれくらいですか?
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告別式そのものは1時間前後で、火葬・収骨を含めても半日程度で完了することが多いです。会食を省略すれば、さらに短時間で終えられます。
- 遠方の親族が一日葬に間に合わない場合はどうすれば良いですか?
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訃報を受けてすぐに日程・時間割を伝え、参列できるかどうかを早めに確認してもらうことが大切です。
- 一日葬は費用が安いことだけを理由に選んでも良いですか?
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費用面だけでなく、参列者の体力的な負担軽減や日程調整のしやすさも一日葬を選ぶ理由になります。ただし菩提寺との関係や親族の理解が得られるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。
まとめ
一日葬とは、通夜を行わず告別式と火葬を1日で終える葬儀の形式です。
参列者・遺族の負担を抑えられる一方で、菩提寺との関係や親族の理解には事前の配慮が必要です。
費用相場や当日の流れを踏まえたうえで、自分たちの状況に合った葬儀の形式かどうかを、早めに家族や葬儀社と相談しながら検討しましょう。
迷ったときは、1社だけで決めずに複数の葬儀社へ資料請求や見積もり相談をしてみると、費用感やプランの違いが具体的に見えてきます。

