法定相続情報一覧図とは、亡くなった方(被相続人)と相続人の関係を一枚の図にまとめ、法務局の登記官が公的に証明してくれる書類です。
この一覧図の写しがあれば、相続登記や預金の払戻し、相続税の申告などの手続きで、そのつど分厚い戸籍謄本の束を提出し直す必要がなくなります。
取得は無料で、申請先は全国の登記所(法務局)です。
法定相続情報一覧図とは?相続手続きを一本化できる証明書
法定相続情報一覧図は、亡くなった方の戸籍関係を一枚の図にまとめ、法務局が「たしかにこの内容の相続関係です」と証明してくれる公的書類です。
法務局「法定相続情報証明制度について」によると、平成29年(2017年)5月に始まった制度で、相続人がこの一覧図の写しを複数枚受け取っておけば、銀行や証券会社、年金事務所など提出先ごとに戸籍謄本一式を何度もそろえ直す手間が省けます。
制度ができる前は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本・除籍謄本を、提出先の数だけ用意するか、1か所ずつ返却してもらって使い回すしかありませんでした。
相続人の本籍地が転居のたびに変わっている場合、戸籍謄本だけで10通近くになることも珍しくなく、1セットそろえるだけでも郵送のやり取りを含めて数週間かかることがあります。
法定相続情報一覧図は、この束をA4用紙1枚の証明書に置き換えられる点が最大の特徴です。
銀行の窓口担当者もこの一覧図の様式に慣れているため、戸籍の束を1枚ずつ確認されるより手続きが早く進みやすいという実務上のメリットもあります。
なぜ今、法定相続情報一覧図が必要とされているのか
もっとも大きな理由は、令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化されたことです。
法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」によると、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
制度が始まる前に発生していた相続についても対象になり、その場合の期限は令和9年(2027年)3月31日です。
相続登記の際に法定相続情報番号を記載すれば、戸籍謄本一式の原本添付を省略できる運用も令和6年4月から始まっており、法定相続情報一覧図を先に取得しておくメリットは以前より大きくなっています。
もうひとつの理由は、単純に相続手続き自体を早く終わらせられることです。
銀行の預金払戻し、証券口座の解約、相続税の申告、年金の手続きなど、相続が発生すると提出先は一つでは済みません。
一覧図の写しを提出先の数だけ請求しておけば、複数の手続きを同時並行で進められ、平日に何度も役所や金融機関へ足を運ぶ負担を減らせます。
すぐに遺産分割の話し合いがまとまらない場合は、義務化への当面の対応として「相続人申告登記」という簡易な申出制度も用意されていますが、これはあくまで暫定的な対応であり、正式な相続登記自体は別途必要になる点に注意してください。
法定相続情報一覧図はいつ取得すればいい?
取得のタイミングは、相続人と相続財産の内容がある程度確定した後、できるだけ早い段階が目安です。
一覧図の作成には被相続人の出生から死亡までの戸籍関係を確認する必要があるため、そもそも相続人が誰かを確定させる作業と重なります。
この確認作業自体は相続放棄の期限(原則として相続開始を知った日から3か月以内)とは直接関係しませんが、相続登記の期限(3年以内)を見据えると、四十九日や納骨などの法要が落ち着いた1〜2か月後を目安に動き始める家庭が多いようです。
急ぐ理由がある場合は、戸籍謄本の収集と並行して法定相続情報一覧図の申出書を準備しておくと、後の手続きがまとめてスムーズに進みます。
逆に、相続財産が少なく単独の口座解約だけで完結しそうなケースでは、必ずしも取得が必須ではありません。
提出先が2〜3か所を超えそうかどうかが、取得するかどうかの一つの判断基準になります。
法定相続情報一覧図の取得方法【3ステップで解説】
法定相続情報一覧図の取得は、書類収集・一覧図の作成・登記所への申出という3つのステップで進みます。
法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」にひな型と記入例が公開されているため、専門家に依頼しなくても自分で手続きすることが可能です。

STEP1では、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本、被相続人の住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本と住民票を集めます。
STEP2では、集めた戸籍にもとづいて被相続人と相続人の関係を一覧図の形にまとめます。
手書きでもパソコンでも作成でき、様式は法務局のサイトから入手できます。
STEP3では、申出書に必要事項を記入し、STEP1・STEP2の書類一式とあわせて登記所へ提出します。
窓口への持参だけでなく郵送での申出も可能です。
登記官による確認が済むと、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付されます。
必要な通数はあらかじめ多めに申出ておくと、追加の手間を防げます。
万一足りなくなった場合も、法務局に保管された一覧図をもとに再交付を請求できます(保管期間は交付の翌年から起算して5年間)。
法定相続情報一覧図に必要な書類一覧
必要書類の中心は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸除籍謄本です。本籍地を転居している場合は、その数だけ市区町村役場をまたいで請求することになります。

これに加えて、相続人全員の現在の戸籍謄本、申出人(代表して手続きする相続人)の氏名・住所を確認できる運転免許証や個人番号カードのコピー、一覧図に相続人の住所を記載する場合は各相続人の住民票が必要です。
戸籍の収集は思った以上に時間がかかることが多く、本籍地を何度も移している方の場合は1か月以上かかるケースもあります。
相続登記の期限を考えると、できるだけ早く着手しておくと安心です。
実際に、手続き先ごとに戸籍謄本や印鑑証明書を何度も準備し直す必要があり、大きな負担になったという声も寄せられています。
一番大変だったのは、銀行口座の解約や不動産の名義変更など、手続きごとに必要書類が異なり、戸籍謄本や印鑑証明書を何度も準備しなければならなかったことだ。平日に役所や金融機関へ行く必要もあり、仕事との両立が大変だった。
戸籍の収集については、法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」にあるとおり、令和6年(2024年)3月1日から「広域交付」という仕組みが始まり、本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)であれば、最寄りの市区町村窓口1か所で全国各地の本籍地の戸籍謄本・除籍謄本をまとめて請求できるようになりました。
ただし、この広域交付は請求者本人が窓口に出向く必要があり、郵送やオンラインでは利用できません。
また兄弟姉妹による請求は対象外なので、その場合は従来どおり本籍地の市区町村へ個別に請求します。
法定相続情報一覧図は「誰が法定相続人か」を証明するものであり、相続放棄の有無や遺産分割の内容までは証明しません。
相続放棄をした人がいる場合や、遺言書がある場合は、別途その旨を提出先に伝える必要があります。
法定相続情報一覧図の取得費用と交付までの期間
法定相続情報一覧図そのものの交付手数料は無料です。
費用がかかるのは、あくまで元になる戸籍謄本・除籍謄本などを市区町村役場で取得する部分で、目安として戸籍謄本1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本1通750円程度です。
本籍地を何度か移している方だと、これらの実費だけで数千円になることもあります。
交付までの期間は、登記所へ申出てから概ね1週間前後が目安ですが、申出が集中する時期(年度末や連休明けなど)は2週間程度かかることもあります。
急ぎで銀行手続きなどを控えている場合は、あらかじめ登記所の窓口に混雑状況を確認しておくと予定が立てやすくなります。
法定相続情報一覧図の申出先はどこがいい?4つの選択肢と選び方
申出先の登記所は、次の4か所から都合のよい場所を選べます。①被相続人の本籍地、②被相続人の最後の住所地、③申出人(代表相続人)の住所地、④被相続人名義の不動産の所在地、のいずれかを管轄する登記所です。


多くの人が選ぶのは、自分(申出人)の住所地を管轄する登記所です。
窓口へ足を運ぶ頻度や、郵送のやり取りのしやすさを考えると移動の負担が最も少ないためです。
一方、被相続人名義の不動産の相続登記もあわせて進める予定がある場合は、その不動産の所在地を管轄する登記所で申出ておくと、後の登記手続きと窓口が同じになり相談がしやすいという利点があります。
迷ったら、まず自分の住所地の管轄登記所を法務局のサイトで確認するところから始めるとよいでしょう。
家族(ほかの相続人)とどう進める?法定相続情報一覧図取得の注意点


法定相続情報一覧図の申出は相続人のうち1人(代表相続人)が行えますが、戸籍の収集や内容の確認はほかの相続人にも早めに共有しておくことが大切です。
一覧図には相続人全員の氏名が記載されるため、誰か一人の判断だけで話を進めてしまうと、後になって「知らなかった」というトラブルにつながりかねません。
特に、相続人の中に遠方に住んでいる人や、疎遠になっている人がいる場合は、戸籍謄本や住民票の取得に協力を仰ぐ場面も出てきます。
委任状があれば代表相続人がまとめて請求できる書類もありますが、本人でなければ取得できない書類も一部あるため、誰が何を用意するかを早めに役割分担しておくと二度手間を防げます。
早い段階で「相続手続きをまとめて進めるために法定相続情報一覧図を取る」という目的を共有しておくと、後の連絡がスムーズになります。
よくある質問
- 法定相続情報一覧図の取得に専門家への依頼は必要ですか?
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必須ではありません。必要書類をそろえ、法務局のひな型に沿って一覧図を作成すれば自分で申出できます。
ただし戸籍の読み取りが複雑なケース(代襲相続や数次相続が絡む場合など)は、司法書士や行政書士に依頼すると確実です。
- 法定相続情報一覧図の有効期限はありますか?
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一覧図の写し自体に法律上の有効期限はありませんが、提出先の金融機関等が独自に「発行から6か月以内」等の目安を設けている場合があります。提出前に各機関へ確認しておくと安心です。
- 交付された一覧図の写しが足りなくなったらどうすればいいですか?
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法務局に一覧図の原本が保管されている期間(交付の翌年から起算して5年間)内であれば、追加の再交付を請求できます。手数料は無料です。
- 法定相続情報一覧図があれば遺産分割協議書は不要になりますか?
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いいえ、別のものです。一覧図は「誰が法定相続人か」を証明するもので、実際にどう遺産を分けるかを取り決める遺産分割協議書とは役割が異なります。多くの手続きでは両方の提出を求められます。
- 相続放棄をした人がいる場合、一覧図の内容はどうなりますか?
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法定相続情報一覧図は戸籍上の法定相続人をそのまま記載する仕組みのため、相続放棄をした人がいても一覧図上は相続人として記載されます。
相続放棄の事実は別途、家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理通知書」等で提出先に伝える必要があります。
まとめ
法定相続情報一覧図は、相続手続きのたびに戸籍謄本の束をそろえ直す手間を省いてくれる公的な証明書です。
取得は無料で、必要書類の収集・一覧図の作成・登記所への申出という3ステップで進められます。
令和6年4月から相続登記の申請が義務化されたこともあり、相続が発生したら早めに取得しておくと、その後の各種手続きをまとめてスムーズに進められます。
銀行の預金払戻しや相続税の申告など、提出先が複数にわたりそうな場合ほど、この一覧図を先に用意しておく効果は大きくなります。
まずは自分の住所地を管轄する登記所と、必要な戸籍の範囲を確認するところから始めてみてください。








