身近な人が亡くなったあと、相続手続きの流れが分からず何から手をつければよいか迷う方は少なくありません。
相続手続きは、死亡届の提出に始まり、相続人・財産の調査、遺産分割協議、相続税の申告、不動産の名義変更まで続く一連の流れで、「死亡後14日以内」「3ヶ月以内」「10ヶ月以内」「3年以内」という4つの期限を軸に進みます。
この記事では、相続手続きの流れを時系列で整理し、費用の目安や専門家への相談タイミングまで解説します。
本記事は法務省・国税庁・裁判所などの公的情報をもとに、そなえ暮らしガイド編集部が作成しています。
相続の手続きは家族構成や財産の内容によって進め方が大きく変わるため、実際の判断にあたっては弁護士・税理士・司法書士など専門家にご確認ください。
相続手続きの流れとは?何から始めるべきか全体像をつかむ
相続手続きは、法律で明確な期限が定められている点が他の手続きと大きく異なります。
役所・家庭裁判所・税務署・法務局と、手続きごとに届け出る先も異なるため、期限を軸に全体像を先に押さえておくと迷いにくくなります。
相続手続きは大きく4つの段階に整理できます。
- 死亡後すぐ〜14日以内:死亡届の提出、年金・保険の手続き
- 3ヶ月以内:相続人・財産の調査、相続放棄や限定承認の判断
- 10ヶ月以内:遺産分割協議、相続税の申告・納税
- 3年以内:不動産の相続登記(名義変更)
財産が現金や預貯金だけの場合は比較的シンプルに進みますが、不動産や複数の相続人が絡む場合は書類集めだけでも時間がかかります。
相続人が遠方に住んでいる、疎遠になっている親族がいる、といった事情があると連絡や書類のやり取りだけで数週間が過ぎることも珍しくありません。
次の章で、なぜこれらの期限を意識する必要があるのかを詳しく見ていきます。
相続手続きの流れで期限を意識すべき理由|3ヶ月・10ヶ月・3年のルール

相続手続きの多くには法律で定められた期限があり、過ぎてしまうと不利益を受ける可能性があります。順番に確認します。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出する必要があります(法務省「死亡届」)。正当な理由なく遅れると、戸籍法に基づき5万円以下の過料の対象になることがあります。
相続放棄・限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません(裁判所「相続の放棄の申述」)。
この期間を過ぎると、原則として単純承認したものとみなされ、借金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です(国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」)。期限を過ぎると加算税や延滞税が発生する場合があります。
不動産の相続登記は令和6年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。
こうして並べると、相続手続きの流れは「短い期限から順に、より複雑な手続きへと進んでいく」構造になっていることが分かります。
特に3ヶ月・10ヶ月は判断や書類の準備に時間がかかる工程が多いため、期限ギリギリで動き始めると間に合わない恐れがあります。
相続手続きの流れ①死亡後14日以内にやるべきこと

相続手続きの最初の関門は、死亡後14日以内に集中する届け出です。
まず市区町村役場へ死亡届を提出し、同時に火葬許可申請を行います。
死亡届は親族・同居者・家主などが届出人になれ、医師が発行する死亡診断書(死体検案書)を添付する必要があります。
葬儀と並行して進めることが多いため、家族だけで対応しきれない場合は葬儀社に相談すると負担が軽くなります。
死亡届の提出後は、次の手続きも順次進めます。いずれも期限が14日以内と短く、住所地の市区町村役場や年金事務所など窓口が分かれているため、優先順位をつけて進めるのが実務的です。
- 世帯主変更届(世帯主が亡くなり、残る世帯員が2人以上の場合)
- 国民健康保険・後期高齢者医療制度の資格喪失届
- 年金受給権者死亡届(年金の受給停止手続き)
- 公共料金・クレジットカードなど契約の名義変更・解約
この段階では相続人や財産の全体像がまだ確定していなくても構いません。
次の章で扱う「相続人・財産の調査」に向けて、通帳や保険証券、不動産の権利証など手がかりになる書類を集め始めておくと、後の工程がスムーズになります。
相続手続きの流れ②相続人・財産の調査と相続放棄の判断(3ヶ月以内)
相続手続きの中でも特に時間がかかるのが、相続人と相続財産を正確に確定させる調査です。
まず優先して確認したいのが遺言書の有無です。
自宅の金庫や書斎のほか、公正証書遺言なら公証役場、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言なら法務局で保管状況を確認できます。
有効な遺言書があれば、その内容に沿って財産を分けるのが基本となり、法務局に保管されていない自筆証書遺言は家庭裁判所での検認という手続きを経る必要があります。
遺言書の有無を確認したら、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取り寄せ、法定相続人が誰かを確認します。
転籍を繰り返している場合は複数の役場に請求が必要になり、数週間かかることも珍しくありません。
実際に、故人が生まれ育った遠方の自治体まで戸籍謄本を取り寄せることになり、時間もお金もかかって苦労したという声も寄せられています。
持ち家があったので不動産登記が大変だった。故人の戸籍謄本を出生から順番に取り寄せる必要があったが、亡くなった父は遠方で生まれ育ったため、父が生まれ育った自治体から戸籍謄本を取り寄せるのに時間もお金もかかって面倒だった。
並行して財産調査も行います。預貯金・有価証券だけでなく、不動産、自動車、そして借金や未払金といったマイナスの財産まで洗い出し、財産目録を作成します。
集めた戸籍謄本は「法定相続情報一覧図」として法務局に申し出て証明を受けておくと、以降の銀行手続きや相続登記のたびに戸籍一式を出し直す手間が省け、複数の窓口を回る負担を大きく減らせます。
プラスの財産よりも借金が明らかに多い場合は、3ヶ月の期限内に家庭裁判所へ相続放棄を申述するかどうかを判断します。
財産の状況がすぐに分からないときは、期限の伸長を申し立てることも可能です。
財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ「限定承認」という選択肢もありますが、相続人全員の合意が必要なため利用件数は多くありません。
相続手続きの流れ③遺産分割協議と相続税の申告・納税(10ヶ月以内)


相続人と財産が確定したら、誰が何を相続するかを話し合う遺産分割協議に進みます。
相続人全員の合意が必要で、一人でも欠けた協議は無効になります。
合意した内容は遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・実印での押印、印鑑証明書の添付が一般的です。
遺産分割協議は感情的な対立が起きやすい工程でもあります。話し合いが長引きそうな場合は、早めに弁護士や家庭裁判所の調停を活用する選択肢も検討してください。
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告・納税が必要です。
基礎控除額は3,000万円と600万円に法定相続人の数を掛けた金額の合計で計算されます(国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」)。
この基礎控除の範囲内であれば申告は不要なケースが多く、相続税がかかるのは実際には一部の家庭にとどまります。
申告書の提出先は相続人の住所地ではなく、被相続人が亡くなった時の住所地を管轄する税務署です。
配偶者が相続する場合は税額を軽減できる特例もあるため、該当しそうな場合は早めに税理士へ確認しておくと安心です。
相続手続きの流れ④不動産の名義変更(相続登記)と各種変更手続き
遺産分割協議がまとまったら、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する相続登記を行います。
令和6年4月1日以降、相続登記は義務化されており、取得を知った日から3年以内に法務局へ申請しなければなりません。
以前に発生した相続で登記が未了のままの不動産も対象になるため、心当たりがある場合は早めの確認が必要です。
申請には登記申請書のほか、被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人の住民票、不動産の固定資産評価証明書などをそろえます。
遺産分割協議がまとまらず3年以内の申請が難しい場合は、相続人であることだけを簡易に届け出る「相続人申告登記」という制度を使えば、過料を避けながら正式な登記の準備を進めることができます。
不動産以外にも、名義変更が必要な財産は多くあります。
- 預貯金口座の解約・名義変更(金融機関ごとに手続き)
- 株式・投資信託の名義変更(証券会社への届出)
- 自動車の名義変更(運輸支局での移転登録)
- 公共料金・保険契約の承継手続き
手続き先が金融機関ごと・財産ごとに分かれているため、まとめて進めるより財産目録に沿ってチェックリスト化しておくと漏れを防ぎやすくなります。
実際に、名義変更の書類の多さに苦労しつつも、司法書士に相談したことで手続きの流れが明確になり、精神的な負担が大きく軽減されたという声もあります。
母が亡くなったあと、銀行口座の名義変更や保険の解約手続きなど、思っていた以上に必要な書類が多く、平日に何度も窓口へ行く必要があった。特に実家の名義変更に関しては、登記簿の取得や必要書類の確認が複雑で、自分だけで進めるのは難しいと感じた。司法書士の方に相談したところ、必要な書類の一覧や手続きの流れを丁寧に説明してくれ、揃えるべきものが明確になった。代行できる部分はすべて任せられたので、精神的にもかなり助かった。
相続手続きの流れでかかる費用の目安


相続手続きにかかる費用は、自分でどこまで対応するかによって大きく変わります。代表的な費用の目安は次のとおりです。
- 戸籍謄本・住民票などの取得費用:1通300円〜750円程度、複数役場に請求すると合計で数千円
- 相続登記の登録免許税:不動産の固定資産税評価額に一定の税率を掛けて算定
- 相続税申告を税理士に依頼する場合の報酬:遺産総額の0.5%〜1%程度が目安
- 相続登記を司法書士に依頼する場合の報酬:数万円〜10万円台が目安
財産がシンプルで相続人も少ない場合は、多くの手続きを自分で進めることも可能です。
不動産が複数ある、相続人同士の関係が疎遠、といったケースでは、専門家に依頼した方が結果的に時間もコストも抑えられることがあります。
例えば評価額2,000万円程度の不動産1件だけを相続登記する場合、登録免許税だけなら数万円程度に収まりますが、これに司法書士報酬や戸籍収集の実費が加わると、総額でもう一段高くなる点は見込んでおくとよいでしょう。
相続手続きの流れを専門家に相談すべきケース
相続手続きは自分たちだけで完結させることも可能ですが、状況によっては専門家への相談が結果的に近道になります。相談先は目的によって異なります。
- 弁護士:相続人同士で意見がまとまらない、遺産分割協議が長引きそうなとき
- 税理士:相続税の申告が必要なとき、節税の相談をしたいとき
- 司法書士:不動産の相続登記や名義変更の手続きを任せたいとき
- 行政書士:戸籍収集や遺産分割協議書など書類作成を任せたいとき
どこに相談すればよいか迷う場合は、まず税理士や司法書士の初回無料相談を利用し、状況を整理したうえで必要な専門家につないでもらう方法もあります。
複数の手続きが絡むケースでは、窓口を一本化できる事務所を選ぶと、書類のやり取りにかかる負担を軽減できます。
相続放棄を検討している場合は3ヶ月の期限が迫るため特に急ぐ必要があります。財産調査の段階で「借金が多いかもしれない」と感じたら、早めに弁護士へ相談してください。
相続手続きの流れに関するよくある質問
- 相続手続きの流れは何から始めればいいですか?
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まず市区町村役場への死亡届の提出から始まります。その後、戸籍謄本を集めて相続人を確定させ、預貯金や不動産などの財産調査を進めるのが基本的な流れです。
- 相続放棄の期限を過ぎたらどうなりますか?
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自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月を過ぎると、原則として相続を単純承認したものとみなされ、借金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。
財産の状況調査に時間がかかる場合は、期限内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます。
- 相続税はどのくらいの家庭にかかりますか?
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遺産の総額が、3,000万円と600万円に法定相続人の数を掛けた金額の合計である基礎控除額を超えた場合に課税されます。
この範囲に収まる家庭も多く、相続税の申告が必要になるのは一部のケースにとどまります。
- 相続登記をしないとどうなりますか?
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令和6年4月1日から相続登記は義務化されており、正当な理由なく3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になることがあります。
過去に発生した相続で登記が未了の不動産も対象になるため、早めの確認をおすすめします。
- 相続手続きは自分だけで進められますか?
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相続人が少なく財産もシンプルな場合は、自分たちだけで進めることも可能です。
相続人同士の意見がまとまらない、不動産が複数ある、といった場合は弁護士や司法書士など専門家に相談すると手続きがスムーズになります。
- 相続手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
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相続税の申告が必要なケースでは、死亡から10ヶ月以内に主要な手続きを終える必要があります。不動産の名義変更まで含めると、財産の内容や相続人の数によって数ヶ月から1年以上かかることもあります。
まとめ|相続手続きの流れは期限からの逆算がカギ
相続手続きの流れは、死亡後14日・3ヶ月・10ヶ月・3年という期限を軸に逆算して進めることが、慌てず対応するための一番の近道です。
死亡届の提出から始まり、相続人・財産の調査、遺産分割協議、相続税の申告、不動産の名義変更まで、それぞれの工程で必要な書類や相談先が異なります。
財産の内容や相続人の状況によって最適な進め方は変わるため、迷ったときは早めに弁護士・税理士・司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。








