相続税は、遺産の総額が「基礎控除額」を超えた場合にだけかかります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、これを超えなければ相続税の申告も納税も不要です。
国税庁の統計では、実際に相続税がかかった人は亡くなった方全体の約1割にとどまり、多くの家庭では相続税を心配する必要がありません。
とはいえ、実家の不動産や預貯金の合計が思っていたより大きくなっていて、想定外に対象になっていたというケースも珍しくありません。
本記事では、基礎控除額の計算方法から税率、非課税制度まで、相続税がいくらからかかるのかを整理します。
相続税は「基礎控除額を超えたら」かかる
相続税がかかるかどうかの分かれ目は、遺産の総額(正味の遺産額)が基礎控除額を超えるかどうかです。基礎控除額を超えなければ、相続税の申告義務も納税義務も発生しません。
反対に、超えた場合は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告と納税を行う必要があります。
出典:国税庁タックスアンサー No.4102「相続税がかかる場合」
基礎控除額の計算方法

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という式で計算します。例えば法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。
遺産総額がこの金額以下であれば、相続税はかかりません。
法定相続人が多いほど基礎控除額は大きくなるため、まずは自分の家庭の法定相続人が何人になるかを確認することが最初のステップになります。
なお、相続を放棄した人がいても、基礎控除額の計算上は「相続放棄がなかったもの」として法定相続人の数に含めます。
誰が法定相続人にあたるかの判断に迷う場合は、相続手続きの流れを解説した記事もあわせてご確認ください。
基礎控除額の計算で見落とされがちなのが「養子」の扱いです。
養子も法定相続人に含めることができますが、実子がいる場合は養子のうち1人まで、実子がいない場合は2人までしか、基礎控除額の計算上はカウントできません。
相続税対策として養子縁組を活用するケースもありますが、この上限を超えて人数を水増しすることはできない点に注意してください。
実際に相続税を払っている人はどれくらいいるか
国税庁が発表した令和6年分の統計によると、相続税の課税対象となった被相続人の割合は10.4%で、統計を取り始めて以降、初めて1割を超えました。被相続人数(死亡者数)1,605,378人のうち、相続税の申告書提出に係る被相続人数は166,730人で、前年の令和5年分(9.9%)からさらに上昇しています。
裏を返せば、亡くなった方の約9割は相続税がかからない計算になります。
ただし、この割合は平成27年の基礎控除引き下げ以降、年々上昇傾向にあり、地価の高い都市部では対象になる割合がさらに高くなる傾向があります。
特に東京都・神奈川県・愛知県・大阪府など地価水準の高い地域では、実家の不動産評価額だけで基礎控除額に近づくケースが少なくありません。
「相続税は一部のお金持ちだけの話」と思い込まず、まずは自分の家庭が基礎控除額を超えるかどうかを一度計算してみることをおすすめします。
相続税の税率と控除額

基礎控除額を超えた部分には、財産の金額に応じて10%から55%までの累進税率が課されます。これは法定相続分に応じた取得金額ごとに定められており、金額が大きくなるほど税率も高くなる仕組みです。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典:国税庁タックスアンサー No.4155「相続税の税率」
実際の相続税額は、この速算表を使って各相続人の法定相続分ごとに計算した金額を合計し、そこから実際の遺産分割割合に応じて按分するという手順で算出します。
計算はやや複雑なため、基礎控除額を超えそうな場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
例えば、遺産総額1億円・法定相続人が配偶者と子1人の合計2人というケースでは、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円となり、課税対象になる遺産は1億円-4,200万円=5,800万円です。
この5,800万円を法定相続分(配偶者1/2、子1/2)で按分し、それぞれの取得金額に応じた税率を速算表に当てはめて計算していきます。
配偶者や生命保険金の非課税制度
相続税には、基礎控除以外にもいくつかの非課税制度があります。代表的なのが「配偶者の税額軽減」で、配偶者が取得した遺産額が1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、相続税がかからない仕組みです。
ただし、相続税の申告期限までに遺産分割が済んでいない財産は、原則としてこの軽減の対象になりません。
出典:国税庁タックスアンサー No.4158「配偶者の税額の軽減」
また、生命保険金・死亡退職金についても、それぞれ「500万円×法定相続人の数」までは非課税となる枠が設けられています。
相続人以外の人が受け取った保険金にはこの非課税枠は適用されない点に注意が必要です。
生命保険を活用した相続対策を検討する場合は、この非課税枠を踏まえて設計するのが基本です。
配偶者の税額軽減は非常に大きな控除ですが、「配偶者に全部相続させれば今回は税金がかからない」という判断だけで進めると、配偶者が亡くなった際の二次相続で、かえって相続税の負担が重くなることがあります。
目先の税額だけでなく、二次相続まで見据えて遺産分割を検討することが大切です。
出典:国税庁タックスアンサー No.4114「相続税がかからない財産」
自分が対象になるか確認する方法

相続税の対象になるかどうかを大まかに確認するには、まず預貯金・不動産・株式などの財産をリストアップし、おおよその評価額を合計してみることから始めます。
不動産は固定資産税評価額をベースに考えるとイメージしやすくなりますが、実際の相続税評価額とは異なる場合があるため、あくまで目安として使ってください。
生命保険金・死亡退職金がある場合は、前述の非課税枠を差し引いた金額を合計に含めます。
借入金や葬式費用など、遺産総額から差し引ける債務がある場合はそれも考慮に入れると、より実態に近い数字になります。
合計額が基礎控除額に近い、または超えそうな場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
実際に、地価が高騰している時期に相続税の金額が確定するまで大きな不安を感じ、税理士に依頼してようやく安心できたという声もあります。
税理士さんにまるまるお願いしたので助かった。その税理士を選ぶこと自体、知識もなく不安だった。最終的に知人に紹介してもらい、良い税理士さんにお願いできたので良かった。ちょうど土地の値段が高騰している時期だったので、相続税の金額が出るまで、ずっと不安だった。
相続全体の手続きの流れは相続手続きの流れを解説した記事、無料相談の探し方は終活・相続の無料相談を紹介した記事で整理しています。
相続税に関するよくある質問
- 相続税はいくらの遺産からかかりますか?
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「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除額を超えた部分に相続税がかかります。
例えば法定相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円で、遺産総額がそれ以下であれば相続税はかかりません。
- 相続税を払っている人はどれくらいいますか?
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国税庁の統計では、令和6年分で亡くなった方のうち相続税がかかった割合は10.4%です。
裏を返せば約9割の家庭では相続税がかからない計算になりますが、都市部では不動産評価額の影響で対象になりやすい傾向があります。
- 配偶者が相続すれば相続税はかかりませんか?
-
配偶者の税額軽減により、配偶者が取得した遺産が1億6,000万円、または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。
ただし申告期限までに遺産分割が済んでいる必要があるなど、適用には条件があります。
- 生命保険金にも相続税はかかりますか?
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相続人が受け取る生命保険金には、「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があります。この枠を超えた部分は相続税の課税対象になります。相続人以外が受け取った保険金には、この非課税枠は適用されません。
- 相続税の申告はいつまでにすればいいですか?
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被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告と納税を行う必要があります。
財産の評価や遺産分割協議に時間がかかることも多いため、基礎控除額を超えそうな場合は早めに準備を始めることをおすすめします。
10か月というと長く感じるかもしれませんが、不動産の評価や相続人同士の話し合いには想像以上に時間がかかることが多く、余裕を持って動き出すことが結果的に慌てずに済むポイントです。
- 遺産に不動産が含まれる場合、評価額はどう考えればいいですか?
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相続税の計算では、不動産は固定資産税評価額とは異なる「相続税評価額」(路線価や倍率方式による評価額)を使います。
おおまかな目安として固定資産税評価額を参考にすることはできますが、正確な評価額の算出は複雑なため、基礎控除額を超えそうな不動産がある場合は税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
相続税がかかるかどうかは、遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除額を超えるかどうかで決まります。
国税庁の統計では実際に相続税がかかる人は約1割にとどまりますが、都市部の不動産を含む場合などは対象になりやすいため、まずは自分の家庭の財産を大まかにリストアップして確認してみることが大切です。配偶者の税額軽減や生命保険金の非課税枠など、活用できる制度もあわせて確認しておきましょう。
基礎控除額を超えそうだと分かったら、慌てて自己判断で進めるのではなく、早い段階で税理士に相談し、10か月という申告期限から逆算したスケジュールを組んでおくと安心です。
相続税は、遺産分割の話し合いと税金の計算が同時並行で進むテーマのため、感情的になりやすい遺産分割の議論と、客観的な数字で決まる税額の話を、できるだけ切り分けて考えることも大切です。
専門家に間に入ってもらうことで、家族間の話し合いがかえってスムーズに進むケースも少なくありません。
掲載している税率・控除額・統計データは取材時点の制度に基づくものです。
税制は改正されることがあるため、実際の申告・納税にあたっては税理士や国税庁の窓口に確認してください。
本記事は国税庁の公表資料をもとにそなえ暮らしガイド編集部が作成しています。








