直葬とは、通夜や葬儀・告別式を行わず、火葬のみで故人を見送る葬儀形式のことです。「火葬式」とも呼ばれ、費用を抑えられる・身体的な負担が少ないといった理由から選ぶ方が増えています。
一方で、参列できなかった知人が葬儀後に個別で弔問に訪れたり、菩提寺との関係で戸惑いが生じたりすることもあり、選ぶ前に知っておきたい注意点も少なくありません。
本記事では、直葬の流れ・メリット・注意点を整理します。
直葬とは|通夜・告別式を行わない火葬のみの葬儀
直葬は、一般的な葬儀で行われる通夜・葬儀告別式を省略し、臨終後の安置を経て火葬のみを行うシンプルな見送り方です。読経や焼香などの宗教儀式を短時間だけ行うプラン(火葬炉の前で僧侶が短く読経するなど)を用意している葬儀社もありますが、基本的な骨格は「儀式を大きく簡略化し、近親者のみで火葬を行う」という点にあります。
参列するのはごく近しい家族・親族に限られることがほとんどです。
似た形式に「一日葬」がありますが、こちらは通夜を省略して葬儀・告別式と火葬を1日で行う形式で、告別式そのものは実施します。
直葬はさらに簡略化し、告別式にあたる儀式も行わない(または火葬炉前でごく短時間の読経のみ)という点が大きな違いです。
式場を借りる必要がなく、火葬場の待合室や式場の小部屋で最後のお別れの時間を持つ程度にとどまることが多く、その分、式場費や祭壇費用がかかりません。
直葬が選ばれる理由と広がっている背景

葬儀業界の調査会社である株式会社鎌倉新書が2026年に実施した全国調査によると、直近2年以内に喪主を経験した人のうち、直葬・火葬式を選んだ割合は10.8%にのぼります。内訳は家族葬47.0%、一般葬30.2%、一日葬11.9%、直葬・火葬式10.8%で、直葬・火葬式は前回調査(9.6%)からさらに増加しています。
高齢化にともなう単身世帯の増加、費用を抑えたいというニーズ、体力的な負担を減らしたいという事情などが、選ばれる理由として挙げられます。
特に、身寄りが少ない単身高齢者や、高齢の配偶者しか喪主を務められない世帯にとっては、通夜・告別式を含む数日間の対応そのものが大きな負担になります。
直葬であれば、搬送・安置・火葬という最小限の対応で完結するため、体力面・気力面での負担を大きく減らせる点が、増加傾向の背景にあると考えられます。
近年は葬儀社側も直葬・火葬式専用のプランを明確に用意しているケースが増えており、以前より選びやすい・比較しやすい環境になってきていることも、割合が伸びている一因といえます。
出典:株式会社鎌倉新書「お葬式に関する全国調査」第7回(2026年)
直葬の流れ

直葬の流れは、一般的な葬儀と大きく変わりません。
臨終後、死亡診断書を受け取り、葬儀社に搬送・安置を依頼します。
法律上、死亡から24時間を経過しないと火葬できないため、通夜・告別式を行わなくても、安置期間そのものは必要です。
安置後、近親者のみで火葬場に集まり、火葬炉の前で短い読経やお別れの時間を持ってから火葬、収骨(骨上げ)を行って終了という流れになります。
式場での儀式がない分、臨終から収骨までの日数自体は通夜・告別式のある葬儀と大きくは変わらず、火葬場の空き状況によって日程が左右される点も同じです。
全体の日程・法的な制約は、通夜・告別式を含む一般的な流れと共通する部分が多いため、より詳しい手順は葬儀の流れ・手順を解説した記事もあわせてご覧ください。
直葬のメリット
- 費用を抑えやすい:式場費・飲食接待費・返礼品など、通夜・告別式にかかる費用がかからない分、総額を抑えやすくなります
- 身体的・精神的な負担が少ない:高齢の遺族や、参列者対応で心身が疲弊しやすい喪主の負担を軽減できます
- 短期間で完結する:通夜・告別式の日程調整が不要な分、比較的短いスケジュールで進めやすくなります
- 近親者だけで静かに見送れる:本人や家族の意向で「大勢に見送られるより、身内だけで静かに」という希望を叶えやすい形式です
特に費用面のメリットは大きく、式場を借りない・飲食接待や返礼品を用意しないという2点だけでも、通夜・告別式を行う葬儀に比べて総額を数十万円単位で抑えられることがあります。
高齢の配偶者が喪主を務める場合や、遠方の親族が多く一堂に会するのが難しい場合にも、直葬はスケジュール調整の負担を軽くできる選択肢です。
直葬の注意点・トラブルになりやすいポイント
直葬は費用や負担を抑えられる一方、事前に知っておかないと後悔しやすい注意点もあります。複数の葬儀社を比較せず、価格の安さだけで急いで決めてしまうと、安置日数の延長や搬送距離、追加のドライアイス代などが後から加算され、最初に提示された金額より総額が膨らむこともあります。
時間に余裕がない中での決断にはなりますが、可能であれば見積書の内訳(含まれる項目・含まれない項目)を確認してから契約することをおすすめします。
代表的なのが、菩提寺(お付き合いのあるお寺)との関係です。
通夜・告別式を行わずに火葬のみで済ませると、菩提寺によっては納骨や戒名授与を断られるケースがあると言われています。
菩提寺がある場合は、直葬にする前に必ず相談し、了承を得ておくことが重要です。
もう一つ見落とされがちなのが、葬儀後の弔問対応です。参列者を近親者だけに絞ることは、裏を返せば「訃報を後から知った知人・近所の方が、落ち着いてから個別にお参りに来る」ことにつながりやすくなります。
参列人数を絞ったため当日の運営はとてもスムーズでしたが、葬儀後に父の訃報を知った知人や近所の方が個別にお参りに来られ、その対応にしばらく追われたのが想定外でした。香典返しや返礼品を追加で手配する必要もあり、身内だけで済ませる場合でも、後日の訪問対応は考えておくべきだったと感じています。
また、一部の自治体が実施している葬祭費・埋葬料の給付制度では、直葬を「葬儀」とみなさず給付対象外とする場合があるとされています。
対象になるかどうかは自治体ごとに異なるため、利用を考えている場合は事前に窓口で確認しておくと安心です。
さらに、遺影写真や祭壇を用意しないことが多いため、後日ゆっくりお別れをしたいという親族の気持ちを置き去りにしてしまうこともあります。
四十九日法要や、後日改めて「お別れの会」を設けるなど、直葬とは別のタイミングで気持ちを整理する場を用意しておくと、親族間の納得感を得やすくなります。
直葬の費用相場
直葬の費用は、通夜・告別式を行う家族葬と比べて大きく抑えられる傾向にあります。
調査によっては、直葬・火葬式の全国平均が40万円台前半という結果も報告されており、総額の目安が50万〜150万円程度とされる、通夜・告別式を伴う家族葬と比べると、式場費・飲食接待費・返礼品費の分だけ総額が下がる構造になっています。
ただし、火葬場が混み合い安置期間が延びた場合のドライアイス代・安置施設利用料は直葬でも発生するため、「直葬だから一律に安い」と単純化せず、見積もりの内訳まで確認することが大切です。
具体的な費用相場や内訳の比較は家族葬の費用を抑えるポイントを解説した記事で詳しく整理しているので、金額を重視して検討している場合はあわせてご確認ください。
費用の安さだけで決めず、前述した菩提寺・弔問対応への備えとセットで検討することをおすすめします。
直葬に向いている人・向いていない人


直葬が向いているのは、菩提寺との付き合いがない、または事前に了承を得られている方、そして遠方の親族が少なく後日の弔問対応も限定的と見込める方です。反対に、菩提寺とのお付き合いを大切にしたい方、地域や職場のつながりが広く多くの弔問が予想される方、故人をしっかり見送る時間を大切にしたい方には、家族葬や一般葬など、通夜・告別式を伴う形式の方が合っていることが多いでしょう。
判断に迷う場合は、費用面だけでなく「誰に、どのタイミングで訃報を伝えるか」まで含めて家族で話し合ってから決めることをおすすめします。
直葬に関するよくある質問
- 直葬と火葬式は同じ意味ですか?
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はい、同じ葬儀形式を指す別の呼び方です。葬儀社や地域によって「直葬」「火葬式」どちらの呼び方も使われますが、内容は通夜・告別式を行わず火葬のみで見送るという点で共通しています。
- 直葬でもお坊さんに読経してもらえますか?
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葬儀社のプランによっては、火葬炉の前で僧侶に短時間だけ読経してもらえるオプションを用意していることがあります。
ただし、菩提寺がある場合にその菩提寺以外の僧侶に読経を依頼すると、後々の納骨や法要を断られる原因になることがあるため、直葬を選ぶ前に必ず菩提寺へ相談し、了承を得ておくことをおすすめします。
- 直葬にすると香典はどうなりますか?
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参列者がごく近親者に限られるため、香典を受け取らない、あるいは辞退する家庭も多く見られます。
訃報を後日知った方から香典が届いた場合の対応(香典返しの要否など)も含めて、事前に方針を決めておくとスムーズです。
- 直葬を選ぶと親族に反対されませんか?
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簡素すぎるという理由で親族から異論が出るケースはあります。
特に年配の親族は、通夜・告別式を省略することに抵抗を感じることもあるため、直葬を検討する段階で早めに相談し、理解を得ておくことがトラブル回避につながります。
本人が生前に直葬を希望していた場合は、その意向をエンディングノートや遺言書などの形で残しておくと、親族間での説明がしやすくなります。
- 直葬にすると葬祭費の補助金はもらえませんか?
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自治体によって扱いが異なり、直葬を給付対象外としている場合があります。国民健康保険や後期高齢者医療制度の葬祭費・埋葬料の給付を利用したい場合は、事前にお住まいの自治体窓口に確認しておきましょう。
まとめ
直葬は、通夜・告別式を省略し火葬のみで見送るシンプルな葬儀形式で、費用や身体的負担を抑えられる一方、菩提寺との関係や葬儀後の弔問対応など、事前に確認しておくべき注意点もあります。
選ぶ前に、菩提寺の有無や親族の意向、後日の弔問対応まで含めて家族で話し合っておくことが、後悔のない見送り方につながります。費用面を重視する場合は、家族葬との比較もあわせて検討してみてください。
直葬・火葬式を選ぶ人の割合は年々増加していますが、それは「誰にとっても正解」という意味ではなく、個々の家庭の事情や人間関係によって向き不向きが分かれる選択肢だということを踏まえて検討することが大切です。
掲載しているデータ・制度の情報は取材時点のものです。
自治体の給付制度や菩提寺との関係は個別の事情によって異なり、また統計データも調査時点のものであるため、実際の対応は葬儀社や自治体の窓口、菩提寺にご確認ください。
本記事は公的資料および実際の体験談をもとにそなえ暮らしガイド編集部が作成しています。









